第3章 気付かないふり
ブラの上からやわやわと触れるその指先にピクリと反応しながらも、いつの間にか外されていた両手の拘束に気が付き目の前の五条先輩の服へとしがみ付いた。
機嫌が悪い。五条先輩がそんな時は無理に抵抗はせず何も聞かないのが一番だ。
そう、どこまでも都合の良い相手でいよう。
それが例えどんなにみっともなく縋り付くような情けない行為だとしても。先輩を否定して拒否されるのが怖い。苛立たせもういいやと言われるのが怖い。
惚れたもの負けとは上手いことをいったものだ。
どんな時だって相手の様子を伺ってしまう。自分は何か間違った事をしていないか。何か癇に障るような事はしていないかと神経をすり減らして考える。
ははっ、本当に馬鹿みたいだ。恋ってこんなにも神経質になるものだっただろうか。
五条先輩が初恋だからそんな事すらわからない。
先輩が与えてくれるものは全て受け止めたい。
先輩がしてくれる事は何もかも受け入れたい。