第3章 気付かないふり
何故そんな事を聞くのだろうか。何故そんな事を気にするのだろうか。
分からない…
だってこんなのまるで…嫉妬みたいじゃないか…そう思った次の瞬間にはそんなありもしない考えに自分自身可笑しくつい笑いそうになった。
五条先輩が嫉妬?あり得ない。親友の夏油先輩を取られたみたいで嫌だったのか、もしくはただなんとなく虫の居所が悪くてそんな事を言っているのか。はたまた何かの気まぐれか…
まぁ良くて自分のセフレが他の男と仲良くしているのを見て、呆れたとかそんな所だろう。
空き教室には私達が交わす唇の隙間から溢れる水音が立ち込め、時折聞こえてくる互いの息遣いに酔いそうになる。
「……ふっ…んンッ」
顎を持ち上げていた五条先輩の指先はいつの間にか私のジャージのファスナーを外し、そしてそのまま流れるようにしてシャツの中へとするりと侵入した。
その指先がやけに熱いのは先ほどまで体術をしていたからか、それとも機嫌が悪いからなのかはわからない。