第3章 気付かないふり
「おはようございます!」
3人で頭を下げながら挨拶をすれば「はよ〜」と眠たそうな硝子先輩の声と、夏油先輩の笑みが返ってきた。
何だかこうして見ると、やはり先ほどまで夏油先輩と二人きりで夏油先輩の部屋にいたのが凄く不思議な感覚で、思わずジッと見つめてしまっていたのだろう。そんな私に気が付いたらしい夏油先輩が瞳を細めニッコリと微笑んだ。
それに慌ててパッと視線を逸らす。ヤバイ、見すぎた。
夜蛾先生が来たのを合図にストレッチを始めた七ちゃんと雄君、硝子先輩はあくびをしながら「七海意外と身体かたいな」なんて言っている。
私もストレッチ始めないと。そう思っていた所で背後に影がかかり、それは簡単に私の影を隠した。
「瞼の腫れ大丈夫そうだね」
真後ろからこそっと耳元に落ちて来た声に思わずビクリと大きく背中を揺らした。
いや、もちろん距離が思ったよりも近すぎて驚いたのはあるが…それより何より、夏油先輩の声があまりに良すぎて…それが突然耳元で聞こえて来たのだ。驚かない方がおかしい。
夏油先輩…イケボすぎでは…?