第3章 気付かないふり
心配そうな顔で質問攻めしてくる二人に申し訳なく思いながらも、にっこりと笑みを見せ「大丈夫!少し眠たかっただけ!」と言えば二人は安心したようにホッと溜息を吐き出した。
本当に優しい同期だ。夏油先輩といい皆んなすごく優しい。
呪術師は変わった人が多いと聞くけれど、私の周りの人達は皆んな優しくて仲間思いなのだ。
さっきまで腫れていた瞼は、ギリギリまで冷やしタオルを当てていたからなんとか他の人に泣いていたと気ずかれないくらいにはなった。
あのまま腫れぼったい目で授業に出たら、七ちゃんと雄君になんて言われたか分からない。それはそれは大事になっていただろう。
これも全部テキパキと私の腫れた目にすら優しくしてくれた夏油先輩のおかげだなぁ。
「おはよう」
その声に思わず少しばかり背中を揺らす。先ほどまで聞いていた穏やかで優しい声。
後ろへと振り返れば、やはりそこには硝子先輩と歩いてくる夏油先輩の姿があった。