第3章 気付かないふり
多分私は昔から、嘘を付いたり何でもないフリをするのが苦手だ。すぐ顔に出ていると良く言われるからだ。
うん、確かに自分でもそう思う。私に偽りごとは向かない。
だけどそれは、少し前までのことで。私は今何の戸惑いもなく何でもないフリをするのが上手くなったと思う。五条先輩との関係が始まってから。私は周囲にバレないようそれはそれは必死で、先輩との関係の終わりがこないようにと、自分を当然のように偽った。
今ではそれも慣れたものだ。七ちゃんや雄君に隠しているのはすごくすごく気が引けるけれど、それでもこの関係はバレる訳にはいかないから。
「七ちゃーん!雄くーん!おはよう!」
ジャージに着替えグラウンドへと迎えば、すでに先に着いていた二人へと大きく手を振る。
そんな二人は私を見るや否や少しばかり真剣な表情を見せると、駆け寄る私を心配そうに見下ろした。
「朝は大丈夫だったの?具合でも悪かった?」
「それとも怪我ですか?昨日の任務の時に怪我したんですか?」