第2章 夏油先輩の部屋
「大丈夫、眠ったよ。君の寝顔を見ていたら私も眠くなってきてね」
「…そっか、それなら良かったです…って、私の寝顔見てたんですか!?」
胸を撫で下ろし安心しながらも、夏油先輩の言葉にギョッと目を見開いた。
いやいや、だって寝顔見られてたの?恥ずかしすぎる。そんなの恥ずかしすぎる!!
カーッと顔が赤くなっていくのに気が付きながらも、慌てて夏油先輩を見上げれば、先輩は楽しそうに笑いながら目尻を下げた。
「私…変な顔してませんでしたか?よだれ垂らしたり…」
「大丈夫だよ、可愛い顔しかしてなかったから」
「…っか!!」
先輩の思わぬ言葉にさらに顔を赤く染める。
可愛いって…今可愛いって言った!?凄いスマートにスムーズに可愛いって言われた。やっぱり夏油先輩は凄い。これがモテテクなのかもしれない。モテる理由が一瞬で分かった。
変なところで言葉を止め動揺する私に、夏油先輩はゆるりと口角をあげると手に持っていた水のペットボトルを私へと手渡す。
「ほら、これで冷やしな。あと1時間もすれば集合時間だから、そろそろ部屋に戻って着替えて来た方が良い」
その言葉にハッとしてテレビの前に置かれているデジタル時計を見れば、時刻は確かに集合時間の1時間前だ。
手渡された水をおずおずと受け取りながら目元へと持っていけば、夏油先輩に見送られながら廊下へと繋がるドアへと向かう。