第2章 夏油先輩の部屋
「あの、夏油先輩本当にありがとうございました!」
乱れた髪を軽く直してから頭を下げれば、夏油先輩は私の目の前で足を止め優しく私を見下ろした。
「眠れたかい?」
「はい、それはもうぐっすり寝てました」
いや、本当に。自分でもビックリするくらい良く眠れた。
「それなら良かったよ、目が少し腫れているね。待ってて、今冷やす物を持ってくるから」
「え?大丈夫です!部屋に戻ったら適当に冷やすので!」
冷蔵庫の方へと向かっていく夏油先輩の手を掴み慌てて引き留める。さすがにもうこれ以上先輩に迷惑はかけられない。
そもそもすでにかなりの迷惑をかけているのだ。もうそれはそれは昨夜から迷惑な事しかしていない。
「遠慮しなくて良いのに」
「でも本当に大丈夫です、ありがとうございます。それよりも先輩も少し眠ましたか…?」
ベットを奪っておきながらこんな事を言うのもどうかと思うが、目の前の先輩はちっとも眠くはなさそうに見えるけれど、私が寝ていた時にちゃんと仮眠をとっていたのだろうか。
だって私のせいで一睡もしていなかったらそれはそれは申し訳なさすぎて…もしかしたら夏油先輩はベットじゃなきゃ眠れない派だったのかもしれないとか今更ながらに思う。床じゃ眠れないタイプの人だったのかもしれない。もしそうだとしたらヤバイ。夏油先輩はこのまま一睡もせず体術の訓練をすることになってしまうからだ。