第2章 夏油先輩の部屋
それがまさか臭いと思ったから断っただなんて誤解されたら困る!!
「そんな事思ってないです!臭いだなんて!ただ先輩のベットを奪ったら悪いなと思って」
慌てて必死に否定する私に、夏油先輩は「そうかい?それなら良かった」とクスクスと小さく笑うと、優しい笑みを見せる。
「それなら大丈夫だね、気にしなくて良いから私のベットを使いな。臭く無いと思っているならね」
クスクスと楽しそうに夏油先輩が笑う。
こんなのずるい。きっと先輩は私がベットで眠れるようにするために、臭いだなんて冗談を言ったんだ。私が断れないって分かってて。
やっぱり夏油先輩は優しいな。眠いと思いながらも、いくらさっきまで笑っていても、それでも今日は一人で部屋で眠るのが怖いと思っている私に気が付いているんだ。
「遠慮しないで。どうぞ」とベッドの布団を先輩がめくってくれて、私は流されるようにしてベットへと上がった。
もぞもぞと布団へと潜り込めば、何だか見られているのが恥ずかしくて顔を半分ほど掛け布団で隠す。
「…良い匂いがします」
布団を顔までかぶったからか、ふんわりと香ってきた夏油先輩の優しい香り。それは心地良く私の眠気をゆるやかに誘っていく。
そんな私の言葉に、先輩は一瞬目を丸めたあとすぐにその表情を元に戻すと私の頭を優しく撫でた。
「おやすみ」と今にも瞼を閉じてしまいそうな私へ優しく声をかけ、薄れゆく記憶の中「夏油先輩…ありがとうございます」と小さな声を出したのだけは覚えている。