第2章 夏油先輩の部屋
「いえ!何でもありません!」と慌てて否定する私に、夏油先輩は「どうせ硝子だろう。全く後輩に何を教えているんだか」と苦笑いをするあたり、普段の私達の会話が完全にバレているらしい。
あはははっと誤魔化すようにして笑えば、夏油先輩はもう一度呆れたような表情をしたあと、ニッコリと微笑んだ。
「眠くなってきた?」
どうやら私が先ほどから眠くなってきていることに気が付いたらしい。
「はい、少し…眠いかも」
夏油先輩の声が落ち着くからかもしれない。眠気を誘うような、そんな低くて心地の良い声だ。
「少し寝むった方が良いね、ベット使いな。眠れば少しはスッキリするはずだよ」
「いえいえ!さすがに夏油先輩のベットをお借りするわけには…寝るなら部屋に戻ります」
「大丈夫だよ、臭くはないと思うから安心して」
その言葉にギョッと目を見開く。だって私は別に先輩のベットが臭いと思ったから断ったわけではない。いくらなんでも先輩を差し置いて後輩がベットで寝るなんておかしいと思ったからだ。そもそも自分の部屋に戻れば良いだけの話しだし。