第2章 夏油先輩の部屋
「うーん。まぁでも、好きな子には全く意識してもらえていないから…彼女どころの話ではないんだけれどね」
「えぇっ!?」
その言葉に閉じかけていた瞳を大きく見開く。
…好きな子?夏油先輩に好きな子!?彼女がいなくて好きな子がいる…それに全く意識をしてもらえていないって事は夏油先輩の片想いってこと!?
開いた口が塞がらないとはまさにこの事だ。
「夏油先輩に好かれてるのに、なびかない人っているんですか?」
思わずそんな心からの本心を口走ってしまう。
すると夏油先輩はクスクスと楽しそうに笑いながら「君は私を何だと思っているんだい」とおかしそうに目尻を下げた。
以前硝子先輩が言っていた言葉を思い出す。五条先輩もめちゃくちゃモテるが、夏油先輩はさらに信じられないくらいモテるのだと。
五条先輩は顔が良いだけのクズだが、夏油先輩は顔も良くて愛想も良いクズなのだと。
だから顔が良くても性格が最低な五条先輩よりも、一見優しくて誰にも愛想良く振り撒いている夏油先輩に落とされる女の子は後を立たず、思わせぶりな態度をとるだけ取って結局振るのだから、こちらはこちらでとんでもなくクズなのだと聞いた。
「あ、これが噂の愛想の良いクズ…」
「ん?何だって?」