第1章 無茶な恋
五条先輩が私に背を向け違う女性と電話しているのを耳の遠くの方で聞きながら、ベッドの下で乱雑に脱ぎ捨ててある服へと袖を通す。
きっと自分は邪魔なのだろう。その証拠に五条先輩はこちらを一瞬見た後すぐに視線を逸らした。
少しシワのついた制服を全て着ると、落ちていたスマホを拾いそっと部屋を出た。先輩の電話の邪魔にならないように。先輩に面倒な女だと思われないように。ただ黙って少しだけまだ火照る身体を抱きしめながら歩き出した。
もう12月だからだろうか、寮の外に出るとキンっと身体を刺すような冷えが身体を覆い先ほどまでの火照りが嘘みたいに消えたいく。まるで先ほどまでの行為が夢だったんではないかと思えるほどに外は冷え切っていた。
何だか1人の部屋に戻る気にもなれず、かと言って同期の七海や灰原を呼び出して今から人生ゲームでもしよう!というような時間帯ではない。時刻は0時になろうとしている。
いくら優しい同期2人だとしても、さすがにこんな時間に声をかけたら何事かと思われ心配をかけるのは目に見えていた。
何とも言えない虚しさと、馬鹿な自分への呆れに溜息を吐き出しながらもとりあえず何処かに座ろうと辺りを見渡す。先ほどまでの行為のせいか異様に疲れた身体を休ませたくて見つけた場所は、高専にある唯一の自動販売機の光。その前にあるベンチへと腰をかけた。