第2章 夏油先輩の部屋
いつも食堂で食べている朝食の時間になれば、夏油先輩は一度部屋を出て行くと2人分の食事をトレーに乗せて戻って来た。
「今日はここで食べよう、一緒にね」と狭いローテーブルを囲んで2人で朝食を取った。
七ちゃんと雄君からはなかなか食堂に来ない私を心配したのか連絡が入ってきて、今日は部屋で食べるから心配しないで。とだけメッセージを送った。きっと2人とも心配している…だけどどうこの状況を説明したら良いかわからなくて…とにかく2人には心配をかけないよう大丈夫だよ。とだけ強く伝えた。
「そういえば、夏油先輩は彼女さんいないんですか?」
朝食を食べ終えて食器を重ねていた時だった。ふと思い立った事を話し始める私に、夏油先輩はその切長な瞳を少しだけ見開く。
今さらだが、もしも夏油先輩に彼女がいたら私がこの部屋にいるのはどう考えたって良くない。だけど優しい夏油先輩の事だ…私をほっとけなくてこうして部屋に入れてくれたわけで、もしもこの状況が彼女さんにバレてしまった場合私は誠心誠意を尽くして彼女さんへ誤解を解かなくてはならない。
そう意気込んでいた私に、いつの間にか表情を元に戻していた夏油先輩が持っていたコップをテーブルへと置いた。
「いないよ、それにもし彼女がいたら君を部屋に入れないよ。だから安心して」
その言葉にホッとする。うん、そうだよ。夏油先輩はそんな事しないか。きっと彼女が嫌がる事はしないんだろうな。