第2章 夏油先輩の部屋
「何か面白い物でもあった?」
クスクスと楽しそうに小さく笑った夏油先輩は私の隣へと座ると、コップを口に付けそれをゴクリと飲み込んだ。
「あ、すみません。キョロキョロ見ちゃって」
「いや、構わないよ。好きなだけ見て」
何も面白い物はないけど。と続けた先輩は、やはり楽しそうに私を見つめた。
良く遊びに行く七ちゃんや雄君の部屋とも違う。もちろん…五条先輩の部屋とも。そもそも夏油先輩とこんなにも長時間2人で時間を過ごすのは初めてで…しかも夏油先輩の部屋でだ。今更ながら少しばかり緊張してしまう。
だけど先輩はそんな私の緊張を解いてくれようとしたのか、それともコミュニケーション能力の高い先輩の話術なのか、初めに意識して以降気まずさを感じる事なく色々な話をした。
夏油先輩の好きな本の話し。最近休みの日に行ったお気に入りの喫茶店の話し。七ちゃんと雄君と行った泊まりがけでの任務の話し。色々な話をしてくれて、それはそれはどれも楽しい話で先ほどまでボロボロに泣いていた自分が嘘みたいに笑顔を見せていた。
そして思う。こうして夏油先輩とゆっくり話すのは本当に初めてだなぁと。自分は夏油先輩の事をまだあまり知らなかったんだなと。