第2章 夏油先輩の部屋
朝日の浴びる古びた廊下を2人で歩き、行き慣れた部屋を通り過ぎてその隣のドアへと手をかける夏油先輩。
そうだ、夏油先輩の部屋は五条先輩の部屋の隣だった。今更だが…五条先輩の部屋の近くにいるのは辛い…
もちろんそんな私の考えを知るはずのない夏油先輩は、ゆっくりとドアを開けると私を中へと引き入れる。だけど部屋に入った瞬間、そんな私の考えはアッサリと消え去っていた。
ふわりと鼻に触れるどこか嗅いだ事のある香り。多分…夏油先輩の香りだ。
五条先輩の部屋とは違う温かくて、優しい香り。
それが、私を不思議と安心させてくれたんだと思う。
「どうぞ」
「…おじゃまします」
自然に離された手に、夏油先輩へ続いて靴を脱ぎ部屋へと上がる。寮の部屋は何処も同じ作りで狭くて古びている。だけど、部屋に入ればその夏油先輩らしい部屋に何故だかとても安心した。