第1章 無茶な恋
どれほど先輩の部屋で泣いていたか分からない。
だけれど、ここにいるとベッドから先輩の香りがして苦しくて。
先輩のかけてくれた布団に包まれているのが辛くて。
もう帰って来ることのない五条先輩をこの部屋で待っている事なんてできなくて。
私はそっとベッドから降りると先輩の部屋を後にした。
古びた寮の廊下をギシギシと床音を鳴らしながら歩く。五条先輩の部屋を出る時に無理矢理止めたはずの涙が再び溢れ出して止まらない。今が真夜中で良かった、日付を変える前だとしたら、きっとまだ誰かしらが通ったかもしれない。だけどいくらなんでもこんな夜中にここに来る人はいないだろう。
そう思い、いつも通り自動販売機の前のベンチへと腰をかける。
ポタポタと垂れてくる涙は止まる事を知らないのか…目が腫れ熱を持ったとしても…それは止まる事なく溢れ続けた。