第7章 不器用な優しさ
だけどそれじゃあやっぱり、強者を守る存在はいなくて…それは間接的に夏油先輩や五条先輩を守る人物がいない事を指している。
何か嫌だな…そりゃあ弱い人が強い人を守るなんておかしな話なのかもしれないけど…だけど先輩達を守る存在がいないのが…私は嫌だ。
「じゃあ私はそろそろ行くよ、補助監督を待たせる訳には行かないからね」
夏油先輩は私へとひらりと手を振ると「次に会う時には元気な姿を見せてね」と優しい言葉を落とし、トレーに乗る器のガチャガチャと言う音と共に食堂方面へと歩き始めた。
だけど気が付いた時には私はそんな夏油先輩目掛け走っていて、その広い広い背中へと思い切り抱き付いた。
夏油先輩の歩いていた足がピタリと止まり、そして私は先輩の背中の学ランをぎゅっと握りしめる。
「…先輩は私達を守るのが当然だって言ったけど、私は夏油先輩が私達を助けてくれた事が当たり前だなんて思ってない。夏油先輩がどんなに強くて敵無しだったとしても、それが当たり前だなんて思いたくないから。だから私達を助けてくれてありがとうございます。私達を守ってくれてありがとうございます」
「…柊木」
「…あと、生意気って思われるかもしれないけど…もし夏油先輩に何があった時、私は命懸けで夏油先輩を守ります。例え私が夏油先輩より弱かったとしても、後輩だとしても、私は全力で夏油先輩を守ります。だって強い人だけが守ってもらえないなんてそんなのおかしいもん!」