第7章 不器用な優しさ
器にスプーンがガチャガチャとぶつかる音を聞きながらゆっくりと歩いていると、目の前からは見覚えのあるシルエットが目に映る。
そしてその人物は寮の入り口からこちらに出てくると、私に気が付いたのか笑顔で手を振り私の方へと歩いて来た。
「もう歩いて平気なのかい?」
心配そうな表情をした夏油先輩は、眉を垂れ下げながら私を見下ろす。
「はい、痛みはほとんど良くなって来てます。でも三日間は絶対安静って言われちゃいました」
「そうか、でもそれなら…こんな物持っていたらダメなんじゃない?」
夏油先輩は私が持っていた朝食のトレーをヒョイっと持ち上げるとニッコリと優しい笑みを作って片手で軽々とトレーを握る。
「これくらいは大丈夫ですよ、全然重く無いですし」
「でも返しに行くのに食堂に行くっていう手間と、体力消耗が心配だ」
「そんな体力消耗するほどの距離じゃないですよ、それに私体力はそこそこあるんです!」
「まぁね、だけどやっぱり心配だからそれは私が片付けておくよ」
「いえいえ!平気ですよ!」
「こういう時は甘えておきな、先輩を立てると思って」