第7章 不器用な優しさ
「五条先輩ってば」
「眠い」
「任務ないの?」
「…ある」
「じゃあ起きないと」
眉間に寄せられた皺は深くなるばかりで、だけれど私を抱え込んでいる腕の温もりは優しい。
「真面目かよ」
「五条先輩がいつも遅刻ギリギリすぎなの」
気だるげな声を出しながら、寝起きのせいか少しだけ鼻声なのが可愛い。五条先輩の眉に寄る眉間の皺を突きながらクスクスと小さく笑っていると、突然五条先輩の肩がピクリと揺れた。
「夜蛾センが来る」
「えっ!!」
ゆっくりと体を動かした五条先輩は、面倒臭さそうな表情をしながらも私の事を抱きしめていた腕を緩めるとベッドから起き上がり脱ぎ捨てていた靴を履く。
椅子に置いていたサングラスはポケットへと入れ、学ランを肩にかければ大きなあくびをしてベッドから立ち上がった。
上半身を起こしそんな五条先輩をベッド上から見上げれば、五条先輩はポケットへと片手を入れると、反対の手で私の頭をわしゃわしゃと撫でる。それはまるで犬でも可愛がるかのように。
「髪ぐちゃぐちゃになった!」
「元からそんなもんだろ」
「そんなことない」
先輩はゆるりと口角を上げ碧く澄んだ瞳をそっと細める。そして背の高い上半身を屈めたかと思うと、私の後頭部を引き寄せ甘いキスを落とした。