第7章 不器用な優しさ
五条先輩はそんな私の言葉に返事はしなかったけれど、それでも私の気持ちを理解してくれたのか、その代わりに私の頭を二度優しく撫でると「寝るぞ」と言う小さな声と共に私をもう一度優しく抱きしめた。
五条先輩の香水の香りと体温を感じながら、これでもかと言うほどに彼の全てを感じたい。
こうしてただ抱き合い眠る事が、今の私にとってどれほど幸せで価値のある物なのか…そんなの考えなくても分かった。
「五条先輩、おやすみ」
五条先輩の背中を抱きしめ返してそう小さく呟けば、しばらくしてとなりからはスースーと規則正しい寝息が聞こえて来た。
相当疲れてたんだな。それなのに会いに来てくれて…凄く嬉しいなぁ。
しばらく寝れそうには無いし、むしろ眠ってしまうのがもったいない気がする。こうやって五条先輩の温もりに触れて寝顔をいつまでも見ていたい。
ずっとずっと、こうして見ていたい…