第7章 不器用な優しさ
ふわふわと五条先輩の髪を撫でれば、白銀の髪と同じ色をした透き通るようなまつ毛がゆっくりと伏せられる。
ふふ、可愛いなぁ。まるで猫みたいだ。
ただ私にされるがまま撫でられている五条先輩が可愛くて仕方がない。
「悪かったな」
「…悪かった?」
一体何が?
突然発した五条先輩のその言葉を理解するにはあまりに前置きもなく唐突で、私はきょとんと目の前の五条先輩を見つめる。
今日助けてもらった私がお礼を言う事はあっても、五条先輩が悪いと言ってくる理由は見当たらない。
閉じられていた瞳はゆっくりと開きそして再び碧色の瞳が私を捕らえると、五条先輩は形の良い唇を動かした。
「電話」
そこで「あ…」と思わずそんな声を漏らした。何故ならば、決してその事に関して忘れていた訳ではないからだ。
だけれどそれは私にとっては消してしまいたい記憶でもある。何なら今五条先輩といるこの幸せな空間では一番聞きたくも思い出したくもない内容だ。
だけれど五条先輩はもちろんそんな私の気持ちを知っているはずも無く話を続ける。
「何て言われた」
「…え」
「何か言われたんだろ」
その声はどこか怒りを含んでいて、私にというよりはその時の状況を思い出して苛立っているように見える。
五条先輩、あの人が私に電話してきた事に気が付いたんだ。