第7章 不器用な優しさ
五条先輩はそのまま私の腰へと片腕を回しきゅっと抱きしめると「まぁ仕方ねぇから、何かあったら助けてやる」と少しばかり意地悪気な声を出すと、ニヤリと笑みを作って腰を抱くのとは反対の手で私の後頭部を引き寄せた。
ちゅっと軽いリップ音が鳴ったかと思うと、いつの間にか唇の隙間から熱い舌が侵入してくる。
そのやけに甘くぬるりとした感覚に小さく唇を震わせれば、それすらも優しく掬い取ってしまうように甘噛みが繰り返され、くちゅくちゅと静かな医務室にやけに甘美な水音が響いた。
だけれど今日のキスは、いつもの噛み付くような激しいキスとは違い優しくて穏やかなモノだ。
まるで大切なものを守るみたいに…私の傷を癒すように…
「…んっ」
いくつかの唇を重ね名残惜しそうに唇の端から垂れた唾液すら五条先輩は優しく舐めとると、後頭部へ回していた手の力を緩めてゆっくりと唇が離れていく。
そして再び美しい瞳が私を捕らえ、その色気に濡れた碧が熱を持ったように私を視界に閉じ込めた。
だけれど、いつもならこのまま二人して生まれたままの姿になり互いの境目が分からなくなるほどに快楽の中へ溺れていくのだが、今日の五条先輩は服の中へ手を入れて来るどころかキスを続けて来ることもなく、五条先輩の真上に乗っていた私を横向きにしてぽすんっとベッドへと横に寝かせる。