第7章 不器用な優しさ
その五条先輩の言葉は、想像をしていた言葉とは程遠くて…だけれどやはり私を心配してくれていたのだと言う事が伝わってきた。
ストレートに心配しているなどという言葉ではないが、素直じゃない五条先輩からしたら、それは信じられないくらいに分かりやすくストレートな言葉のようにも感じる。
あぁ、そうか、そういえばこの人はどこまでも不器用な人なのだ。
どこまでも素直じゃなくて分かりにくい人だったっけ。
だけれど、好きな人から珍しくこんな心配した言葉だけではなく、なんならこうして様子を見に来てくれた事が凄く凄く嬉しくて。
「はい、強くなります」
そう心から呟き五条先輩を真っ直ぐに見下ろせば、五条先輩は私の身体を引き寄せ軽く抱きしめた。
「口じゃあ何とでも言えんだよ」
うん、やっぱり五条先輩は素直じゃない。それなのに私を抱きしめてくれるその大きく逞しい腕はとても優しく…そして温かに感じた。
何故なら彼にしては珍しく、耳元に落ちて来るその声が…とても優しく柔らかなモノだったからだ。