第1章 無茶な恋
だけど私はまだまだ子供で。こうして幸せな事があれば、次に来るのは辛い出来事なのだと考えもしていなかった。
分かっていたはずなのに、この偽物の幸せの中でぬるま湯に浸かり…そして現実から目を逸らしていたことを後悔することとなる。
真夜中だと思う。私も五条先輩も任務の疲れからかすっかり深い眠りについていて、だけれど何度も鳴るその電子音にそっと目を覚ます。
それはどうやら五条先輩も同じだったようで「ん…」と小さな声を出せば枕元に置いてあった自分の携帯を手にした。
画面を見る事なく出たそれを、私は寝ているフリをしながら聞き耳を立てる。本当はこんなことしたって何も良いことなどないと分かっているのに。私の不安はそれを許してはくれない。
「はぁ?」
しばらくして私の少し頭上から聞こえてきたそんな声。無意識か大きく出してしまった声に、私が寝ている事を気にしてくれたのか、先輩はベッドからなるべくそっと降りるとギシギシと古びた床音を鳴らしながら移動していく。
「はぁ、面倒。無理」
眠たそうな声を出しながらもそんな否定的な言葉を放つ先輩にホッとしてしまう。何故なら、先輩の話す携帯の向こう側からは、自分には出すことのできないほど甘く女性的な声が聞こえて来るからだ。