第1章 無茶な恋
乱れた呼吸を整えるようにしてベッドへと横になれば、ミネラルウォーターを飲んでいた先輩がベッドへと戻ってくる。
「あー、眠みぃ」
「くあぁー」とあくびをしながら綺麗な白髪をかいた五条先輩は、私の隣へと横たわると、布団をかけ裸のまま潜り込んできた。
「このまま寝るぞ」
「え?泊まっても良いの?」
「明日の午前はお互い何もないし、なら泊まってけば」
これも、先輩とセフレになって知った意外なことの一つだ。もちろん機嫌の悪い時や、面倒な時はこんな言葉言うどころか、さっさと出て行けオーラを全開に出してくるが、本当にたまに機嫌の良い時や気分が乗った時なんかはこうして泊まることを許可してくれる。
正直先輩はこんな恋人みたいなことをセフレとするなんて思っていなかったから意外で、時々泊まることを許可された時はそれはそれはニヤけが止まらないほどに嬉しい。
「明日の体術の授業だりぃ」
「ふふっ、七ちゃんのこと鍛えてあげるんでしょ?」
「アイツもし明日傑のこと選んだらぶっ飛ばす」
だからこうして、何気ない事をベッドの上で少し話しながら、服を纏わず生まれたままの姿で互いを軽く抱きしめ合い一緒にいられる時間がたまらなく幸せだった。
例え、先輩のそういう相手が私だけじゃなかったとしても。
それでも先輩の部屋にこうして入れるセフレは私だけなのだと。変なところで優越感に浸りながらただ五条先輩を独り占め出来るこの空間が、私にとっては特別以外の何物でもなかった。