第7章 不器用な優しさ
「端に行きすぎ、落ちるぞ」
あぁ、なるほど、だからこっちに引っ張ってくれたのか。
五条先輩の瞳に吸い込まれるような感覚になりながらも、頭の中はやけにそんな冷静な言葉を見つけ出していて…「ありがとうございます」と小さくお礼を言えば、五条先輩はその碧く輝く瞳を細め口を開いた。
「痛みは?」
「今はかなり落ち着いてる…かな」
「ふーん、そう」
自分から聞いて来たくせに、やけに素っ気ない返事をしてくるが…これはもしかしてもしかしなくても…私を心配して様子を見に来たのでは?
いやいや、まだそうと決まった訳じゃない。五条先輩は弱い人間が嫌いだ。その証拠に任務で怪我をした時は何度呆れられたか分からない。それはもちろん七ちゃんや雄君も同じで、五条先輩に怪我した事がバレると良く馬鹿にされると言っていた。
だから…そんな五条先輩が私の怪我の心配をするはずなんてなくて…弱くてどうしようもない私を心配して様子を見に来るなんてあるはず無くて…
「もっと強くなれ」
「…え」
「死にそうになってんじゃねェよ」
「………」
「簡単に死なねェくらい、強くなれ」