第7章 不器用な優しさ
そして五条先輩は無言のままプチプチと学ランのボタンを外しそれを脱ぐと、ベッドサイドに置いてある椅子へと放り投げる。その次に外されたサングラスも学ランの上へ置くと革靴を脱ぎ捨てた。
「そっち詰めて」
「へ?」
ただただ五条先輩の動作をボーッと見つめていた私は、五条先輩の言葉にやっと我に帰る。
「もっと横に詰めろ、狭い」
「あ、はい!」
五条先輩に言われるがまま慌ててベッドのギリギリまで詰めると、五条先輩は私の座る隣へとゴロリと寝転んだ。
え、今一体どんな状況なの??
思わずポカーンと口を開いている私へと、五条先輩の手が伸びてくる。それはするりと私の腕を掴みゆっくりと自分の方へと引き寄せると、体制を崩した私は寝転ぶ五条先輩の上へとぽすんっと乗っかった。
碧くまるでキラキラと輝く海や、雲はひとつない晴れた空を閉じ込めたみたいな瞳が私を真下から見上げる。
いや、美しい星を目一杯閉じ込めた夜空のようにも見える。
それは多分、薄暗く小さな電気しか付けていないこの空間だからこそなのかもしれないが。
私を見つめるその碧が、どうしようもないほどに私を射抜く。