第6章 二人の最強
あ、どうしよう…まだ先輩達にお礼を言えてなかった。そう思ったのも束の間、恐らく高専へと電話をしていた顔見知りの補助監督さんはいつの間にか運転席へと座っていて、窓の外へと顔を向ければにこやかに手を振る夏油先輩とどこか不機嫌そうな五条先輩を残して車は滑らかに発車した。
バックミラー越しにあまりにボロボロな姿でいる私と七ちゃんを、補助監督さんが心配そうに見つめて来る。
それはそうだ、現場の等級測定のミスは補助監督の責任になるからだ。まぁだからと言ってこの人が現場の等級を確認しに行ったわけじゃないのならばその人の責任では無いのだが、それでも同僚のミスに動揺せざるを得ないだろう。
「二人とも大丈夫?」
「うーん、何とか…でも肺が今にも潰れそう…」
「え!?肺!?息出来てる?平気!?!?」
「出来てるよ…大きい声は出せないけど…」
「じゃあ喋らない方が良いよ!家入先輩への説明は僕がするから!七海は?七海はどこが痛い??」
「左腕と右足が折れてますね」
「ちょっ!二人とも重症だよ!!もう二人とも寝て!着いたら起こすから寝て!!」
「…灰原が煩くて寝れません」
「こんな時まで憎まれ口叩かない!!」
「ぷふ…っ…ちょ…二人とも笑わせないで…っ肋骨に響く」