第6章 二人の最強
七ちゃんは私を自分の胸元へと押し付け、そして反対の手で自身の鼻と口を覆った。ただの霧なのかも、それとも毒素の含まれた呪いなのかも分からないからだ。
七ちゃんの学ランにしがみ付くようにしてしばらくいると「チッ」と彼にしては珍しく取り乱したような舌打ちが聞こえてきて、私はそれにゆっくりと顔を持ち上げた。
「やられましたね」
「…え?」
私を抱きしめていた七ちゃんの腕の力がゆるまり辺りをキョロキョロと見渡せば、私はその七ちゃんが言った意味を聞かなくてもすぐに理解した。
何…ここ…
辺り一面にはお花畑が広がり、そしてキラキラとした青空が広がっていたからだ。
それも…何故か白色の菊の花の花畑だ。奇妙なんてものじゃない、他の花ならまだしも、菊の花というのがやけに引っかかって、そして私達を困惑させた。
「さっきまでビルにいたはずなのに…」
口先から溢れたのはそんな情けない一言で、それとは対照的に内心は焦りと指先の震えに自分達の置かれている状況を理解する。