第1章 無茶な恋
五条先輩の部屋に行けば、先輩は映画を観る準備をしてくれていたらしく小さなテーブルの上にはココアとミルクティーが置かれている。そんな小さな優しさに胸が躍る。
多分ココアは甘いもの好きな五条先輩の分。いつも飲んでるし。そしてその隣に置かれているのは、私が1番好きな飲み物だ。多分偶然…いや絶対に偶然だけれど、それでも自分が一番好きなミルクティーが置かれていた事が嬉しかった。
ベッドを背に腰をかければ、その隣に座った五条先輩が私の肩を軽く引き寄せながらDVDの再生ボタンを押す。
五条先輩からしたら肩を組むなんて、なんて事ない当然のような動作の一つなんだと思う。きっと誰にでもしてる、私以外の人にもしている。そんな当たり前のような動作。だけどそれでも私の心臓を鳴らすには十分で、馬鹿みたいに早く打ち付ける心臓に、正直映画どころではなかったのが本当のところだ。
映画を見終わりミルクティーを口にしていると、不意に持っていた缶が奪い取られる。
抱かれていた肩が軽く引かれ、ぎゅっと力が込められると唇に温かい感覚が触れた。
「……ふっ…んン…」
優しく触れていただけのソレは、次第に深くなり互いの舌が絡まり合う。熱と熱がぶつけられるようにして混じり合う互いの唾液は、頭を麻痺させるには十分で…先輩も私も甘い物を飲んでいたせいか、いつもよりも重なり合うキスがやけに甘く感じる。