第6章 二人の最強
眉間にシワは寄るものの、なかなか開かない瞳。
「夏油先輩〜?」
先ほどよりも少し大きな声でそう名前を呼べば、ぎゅっと瞑っていた瞼の力が抜けてゆっくりと開いていく。
「おはようございます」
「…おはよう」
少しだけ掠れた声、うっすらと開かれた瞳は眩しそうに細められていて…その表情はまだ何処か寝ぼけているようだ。
もしかして…夏油先輩って朝が苦手なんだろうか?何だか意外だ。スッと早起きとかしそうなタイプだと思っていた。
布団の中でモゾモゾと動きながらも、私の身体を抱きしめている腕は離れる事なくしっかりと掴んでいて、少しだけぼーっとした表情の夏油先輩が何だか可愛く見えてしまう。
「ふふっ」
「…何で笑ってるんだい」
「なんだか夏油先輩が可愛くて」
「…可愛い?私がかい…?」
「はい、朝苦手なんだなぁと思って、凄く眠たそうだから」
夏油先輩が連日のハードな任務で疲れているのは間違いないだろう。それに昨日は私が迷惑までかけちゃったし。
だけど夏油先輩のこんな姿は普段からは何だか想像出来なくて、薄らとしか瞳を開けず掠れた声のままモゾモゾと布団から出る気配もない夏油先輩が、何だか私に気を許してくれているみたいで凄く可愛く思えた。