第5章 抱きしめる意味
夏油先輩の恋はどんな恋なのだろうか。好きな人はどんな雰囲気で、いつから好きで、その人のどんな所が好きなのだろうか。
聞いてみたい気持ちもある…だけど、私達はそんな事を気軽に聞けるような関係ではないように思えた。
だって…今だけは自分達の辛い恋愛から逃げて、互いを慰め合おうとしているのだから…だ。
それに私と五条先輩の関係を知って以来、夏油先輩は二人きりの時に五条先輩の話をして来る事はほとんど無い。それはもちろん何気ない話の中に出て来たりはするが、わざわざ五条先輩の名前を出して来る事は無いし、それは多分夏油先輩の中でその方が良いと判断したからなのだと思う。
正直言ってありがたい。夏油先輩とこうした関係になるのならば、二人きりでいる時はお互いの好きな人の話はしない方が良いだろうから。
「明日は近場の任務かい?」
「はい、集合時間も9時で遅めです。夏油先輩は?」
「私は新宿だよ、確か8時集合だったかな」
「私達も新宿です!一緒ですね」
「そうなんだね、七海と灰原も一緒かい?」
「3人一緒です、廃ビルの低級呪霊案件なんですけど数が凄いみたいで」
「なるほど。大丈夫だとは思うけれど気を付けてね、低級でも油断は禁物だからね」
「はい、しっかり任務こなして来ますね」