第5章 抱きしめる意味

私はズルイ。どこまでもズルイ人間だ。




ただ一人の人を好きなはずなのに…その想いすら一人では抱えられないなど…どうしようもないほどに弱くて情けなくてみっともない人間だ。



五条先輩を好きじゃなくなるなんて出来ないし、五条先輩を好きじゃない自分なんて今はもう想像も出来ない。




片思いをしている人達は一体どうやって自分の心を保っているのだろうか。両思いだって同じだ、相手の心の中は見ることは出来ないし思いの大きさだって同じじゃない。




それなのにどうしたら上手く恋愛が出来るんだろうか。




いや…そもそも私みたいに、好きな人とどうしようもない関係になどなる人はそうそういないのかな…




片思いを拗らせて、挙句セフレになるなんて…周りの人に言えるはずがないし、胸を張って素敵な片思いだなどと言えるはずもない。




それどころか普段は自分の気持ちを隠して、隠して、隠し通して…好きだと言うアピールすら出来ていないのだ…




そんなの…両思いになるどころの話しじゃない。好きになんてなってもらえるわけがないのに…それでも今の五条先輩とのこの関係を、やっぱり今更解消するなんて出来るはずもなかった。