第5章 抱きしめる意味
とにかく頭の中はそんな感じで終始パニック状態で、だけれどそんな緊張が夏油先輩にも伝わっていたのだろう。
「ふふ、もしかして緊張してるかい?」
そんな少しどこか楽し気な声が聞こえてくる。
「緊張しないなんて無理です…」
「身体ガチガチだね、そんなんじゃ眠れないよ?ほら、力抜いてごらん」
「む、無理です!」
ただひたすらに夏油先輩のガタイの良い胸元を見つめていた視線をパッと持ち上げてみれば、いつの間にかカーテンの隙間から差し込む月明かりで部屋が照らされていた事に気がつく。
暗闇に目が慣れて来たんだろうか。
真っ直ぐと見つめた先の夏油先輩は普段おだんごで一纏めにしている髪を下ろしていて、そして私を見つめ目尻を下げた。
「今日は天気が良かったから、夜でも月明かりで明るいね」
「そうですね、それに寮のカーテンは薄いから余計明るいです」
「遮光カーテンにすると寝坊しそうだけれどね」
「確かにそうですね、夜の任務後とか絶対起きれない」