第5章 抱きしめる意味
そんな事を考えながらテレビをボーッと見つめていると、携帯を手に取った夏油先輩がゆっくりと立ち上がる。
「そろそろ寝ようか」
そう言われてテレビ前に置かれているデジタル時計を見れば、時刻は0時を回ろうとしている。いつの間にそんなに時間が経ってたんだろうと思う。明日も任務だ。確かにそろそろ寝ないと。
ベッドへと腰掛けた夏油先輩はベッドをぽんぽんと二度叩き「一緒に寝ようか」と優しい声を出してニコリと微笑んだ。
でもそんな夏油先輩の言葉が一瞬理解出来なくて、ポカーンとフリーズした後ぱちぱちと瞬きをする。
「え?」
「一緒に寝よう」
「えぇっ!!」
丸々と目を見開きアホみたいに口を開け驚いた顔をする私に、夏油先輩はクスクスと小さく笑い声を出す。
いやいや、だってこんなの驚かないとか無理でしょ!絶対むりでしょ!一緒に寝るの?私と夏油先輩が!?確かに泊まるって事に頷いたものの、そこまでの事は全く考えてなかった。
「大丈夫、ただ抱きしめて眠るだけだよ」
だけれどテンパる私とは裏腹に、こちらを見つめてくる夏油先輩の声があまりに優しく穏やかで、その笑顔と言葉に引き寄せられるようにしてゆっくりと立ち上がると、夏油先輩が手招きしてくるベッドへと座り込んだ。