第5章 抱きしめる意味
本当は…甘ったるい女性の声とか、五条悟先輩から香って来る香水の匂いとか、首元に見える赤く生々しい跡だとか、本当はそんなことどうでも良かった。
ただ五条先輩を好きなままでいられるならば。自分は何だってしてみせると…どんなに五条先輩の心が欲しくても、彼の側から離れるんじゃ何の意味もない。
矛盾している。五条先輩の唯一になりたいはずなのに。怖くて怯えている。
ただ、五条先輩を好きでいたい。
どこまでも愛しくて仕方ない五条先輩のことを…
私はただひたすらに、好きでいたいんだ。
その為なら何だってしよう。自分を制御できず涙が流れるなら寂しさや辛さを埋めよう。例えそれが…尊敬する先輩に甘え利用するような行為だとしても。
この目の前の、温かで優しいこの人に私はいっそのこと溺れてしまおう。
五条先輩を好きでいるために、私は夏油先輩の差し出してくれる手を…