第1章 無茶な恋
するりと小指に何か触れた感覚。それが五条先輩の指先だと気が付くまでそんなに時間はかからなくて。
バッと目線を上にあげ赤面すれば、ニヤリと意地悪気に口角を上げた五条先輩が真っ直ぐに私を見下ろしていた。
え、カッコ良すぎる。やばい、どうしよう。そんな考えが頭を支配するまでに数秒動きが停止する。だけど五条先輩は真っ赤になるそんな私を見て楽しそうに笑うと「これよりもっと凄いこと、いつもしてんだろ」と呟き指先に絡めていた手をさらに深く握ると、恋人繋ぎをした。
え?え?は?えぇ!?
頭の中はもはや大パニックで訳がわからない。え?私今五条先輩と手繋いでる?夢?夢なの?夢なら覚めたくない。夢なら覚めないで!!
と思っていた思考も、前から楽しそうな3人の笑い声が聞こえてきてハッと現実に戻される。
「五条先輩っ、皆んなにバレるよ!」
小さな声で叫びながらも慌ててその手を離そうとすれば、五条先輩は何の気にもとめることなくそのまま手を握ったままだ。
「バレねぇよ。誰もこっち見てないし」
「で、でもっ!!」
「何?そんなに離したい?」
私の反応に不満があるのか、五条先輩は一気に不機嫌そうな声を出すとサラリと揺れる白髪の隙間から私を見下ろした。
「それはっ、違うけど…離したくないけど…」