屈強なおまわりさんにめちゃめちゃに甘やかされているのですが。
第2章 陽だまりと闇
「それにしても、なんでいきなり欲しいもの…?」
あれから結局たっぷりと甘やかされた。ガントさんに急な仕事が入ったおかげで、最後まで駆け抜けることはなかった。危なかった。
仕事に向かうガントさんを見送り、帰り道。さっきの言葉の意味を考える。
私の誕生日は少し先だし、クリスマスでもないし…
「…あ。」
もしかすると。
でもこれが当たってるとすれば、申し訳がなさすぎる。
街の至る所にかかっている、水色のリボンが基調の広告を見ながら、そんなことを考えた。
「へぇ、今はホワイトデーも色々売ってるんだなあ。」
大学が早く終わり、私はデパートに来ていた。
そう、ガントさんの言葉の意味は、ホワイトデーでは無いかと踏んだのだ。
だとしたら、バレンタインデーに何もしてない私からすると、申し訳がなさすぎるので、私からも何か送ろう、と考えた次第である。
「…あれ。」
こうも会うものか。
ホワイトデーの特設コーナーに、ものすごく険悪な顔をした男の人が1人。
そう、ミツルギさん。
「み、ミツルギさん…?どうしたんですかそんな顔して…」
「ム…メオさん。そんな顔、とは?」
どうやら、自分の顔が凄いことに気づいていないらしい。
「なんだか、思い詰めてるような顔してましたよ…?」
「ム…」
ミツルギさんは、少し考えた様子を見せた後、小さな声で喋り始めた。
「実は、バレンタインに少々物を頂き…お返しをするのがレイギだと、刑事から言われたのだ…」
「ふむふむ、なるほど…でも、何を買っていいのか分からない、と」
「!」
図星、だね。
「私も、ちょうど渡す物を探してて!よかったら一緒に探しますか?」
「ム…それなら、よろしく頼む。」
そんなこんなで、ミツルギさんとのデパート巡りが始まった。
「何人くらいにお返しするんです?」
「…わからない。数十人、といったところだろうか。」
凄い…流石イケメンで若い検事さんなだけのことはあるな…
「無難に誰でも食べられそうなお菓子がいいと思いますね、ホワイトデーに渡すお菓子は意味があるっていう説もありますから、一応意識してもいいかもしれません。」
変にゴカイされたらめんどくさいだろうし。
「なるほど…クッキー、などが無難だろうか。」
「いいと思います!!」
個包装されている可愛いクッキーを購入し、ミツルギさんの用事はひと段落した。
