第8章 Rose
リヴァイはローズの体を横たわらせた。
これから起こることを考えると、そうした方がいいような気がしたのだ。
ローズは日の光を全身に浴びていた。こうして見ると、ただ日向ぼっこをしているだけのように見える。
だが、彼女が再び起き上がることはない。それがリヴァイが最もよく知っていることだった。
「ローズ」
そのとき、ローズの体がわずかに動いた。
胸がぐっと持ち上げられ、そこから何かが生まれようとしている。そこから何かが首をもたげようとしている。
リヴァイは黙ってそれを待った。辛抱強く待ち続けた。
やがて、皮膚を、服を突き破り、それは現れた。
「──薔薇」
血をまとい、鮮やかな赤を日に照らされながらそれはついに咲いた。
みずみずしい薔薇だった。息を呑むほど美しい薔薇だった。
日を少しでも浴びようと太陽をじっと見上げている。
「お前が、ローズの中にいたのか」
こっちの気持ちなんか知らず、それは咲き誇る。
そうして、ローズの体という体から薔薇が咲き始めた。まるで合図を待っていたかのように。
「ローズ」
名を呼び、手を伸ばす。
もう、ローズに触れることはできなくなってしまった。この薔薇の大群をかき分けることはきっと難しいだろう。