第8章 Rose
「綺麗な薔薇だな」
エルヴィンの声にリヴァイは顔を上げた。
そこはリヴァイの執務室。書類を届けに来たエルヴィンは机の上に飾られている一輪の薔薇を見て言った。
「あぁ、まぁな」
リヴァイは書類を受け取ろうとした手を動かして、薔薇の花弁にちょんっと触れる。
「……まるで、彼女のようだ」
リヴァイは何も言わなかった。
ただ目を細め、ゆったりと口角を上げただけだった。
「綺麗な薔薇でしょう?」
かけられた声にリヴァイは顔を上げた。
街角の小さな花屋だった。
店員は穏やかに微笑んで言う。美しい女性だった。
「あぁ」
そして、薔薇を一輪持ち上げた。
「花言葉は、なんだっけな」
女性は笑った。
花が咲いたような、明るい笑顔だった。
「“何度生まれ変わってもあなたを愛する”」
リヴァイは静かに頷いた。
「あたし、ロールケーキが食べたいの」
「奇遇だな」
そうして、その体を柔らかく抱き寄せる。
肩に顔をうずめ、リヴァイは言った。
「俺もだ、ローズ」