第8章 Rose
天井に空いた穴から日が降り注いでいた。
冬の気配を感じるキンと締まった風が吹き込んでいた。
しかしそこにはやはり一輪の花もなかった。
春に来たときは溢れんばかりの花が咲いていたのに。こうして見ると、その場所はひどくみすぼらしかった。
「ローズ」
「連れてきてくれてありがとう。リヴァイ」
彼女は笑ってリヴァイを見上げる。
あの時と同じように。
「日の当たるところに行こう」
「えぇ、おねがい」
土を踏み締め歩く。ぽっかりと空いた穴の下に腰を下ろす。
その地面だけが唯一乾いていた。
ローズを隣に座らせて、そっと肩に頭をもたせかける。ローズは心地良さそうに微笑んだ。
「あったかい」
「あぁ、あったかいな」
しばらく二人は黙っていた。
それぞれに考えることがたくさんあった。それぞれに、かけたい言葉がたくさんあった。何から言えばいいのかわからないほどたくさん。
「あたし、死ぬのがとってもこわいの」
「うん」
「そういう、運命だってわかってるのに、こわくてたまらない」
「うん」
ローズの体は微かに震えていた。
強く、ローズを引き寄せる。
「……ずっと、俺がいるから」
「えぇ」
「だから、大丈夫。お前は一人じゃない」
「とっても、しあわせ」