第8章 Rose
「きゅう、に、心臓がいたんで、うごけなくなったの」
荒い呼吸がローズの喉から溢れていく。
どこか遠くから鐘を打ち鳴らすような音が聞こえてきた。それは煩わしくリヴァイの耳の奥で響き続ける。それが自分の心臓の音だと気づく。
リヴァイは必死に呼吸を繰り返した。
まずは、心を落ち着かせなければならない。ローズと話をするために。
「寝たら、きっと、よくなるから、大丈夫だよ」
「バカ言うな」
「ほんとう」
「今さら、誤魔化すんじゃねぇ」
「だって、」
あなた、あたしより苦しそうな顔してるもの。
囁いて、ローズの手がリヴァイの頬に触れた。
唇を噛み締める。きつく目を閉じる。
「誰のせいだと」
「リヴァイ」
目尻を撫でられ、リヴァイは目を開いた。視界は滲んでいた。涙はまだ、こぼれなかった。
「お願いがあるの」
「……なんだ」
「あたしを、連れて行って」
「どこへ」
ローズの表情が優しくゆるむ。
どこかを思い出し、彼女は穏やかな声で言った。
「あなたと初めて行った、あの花畑へ」