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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第8章 Rose



 扉が軋んで開く。リビングからは蝋燭の光が溢れている。
 いつもと同じように、いつもと同じ光景を辿る。


「ローズ?」


 だが、そこにあったのはいつもと違うローズの姿だった。


「ローズ!」


 ローズがリビングで倒れている。
 夕食の準備をしていたのだろう。床にはスープが飛び散り、鍋が転がっている。その中にうつ伏せになって倒れ込んだローズはぴくりとも動いていなかった。


「ローズ、ローズ!」


 叫ぶ。ロールケーキの入った箱を放り投げる。ローズに駆け寄り、その体に触れる。
 そっと仰向けにして抱き上げて口元に耳を近づける。微かな息遣いが聞こえた。まだ、生きている。死んではいない。

 リヴァイはそのことに深く安堵し、しかし苦しそうに呻くローズの姿は無事とは言えない。


「ローズ、どうした。何があった?」


 まぶたが震えて、ゆっくりとローズの両目が開いた。その瞳の中にリヴァイが映り込み、ローズは口を動かす。


「ゆか、よごしちゃって、ごめん、ね」

「床、そ、んなこと今はどうだっていい、ローズ、ローズ」


 リヴァイは強く首を横に振った。床なんてどうにでもなる。今はローズのことだけが心配だった。


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