第8章 Rose
「ロールケーキ」
リヴァイはショーケースに並んだものたちを眺めていた。
これが商人が地上から持ってきたという甘いものだ。実物はもちろん初めて見た。少し高いが買えないほどではない。
しかし……
「なんだこれ」
何か不思議な生地に白いクリームが巻かれている。
どんな食感なのか全く想像できない。ポカンと口を開けていると、商人が微笑ましそうに笑った。
「ロールケーキを見るのは初めてかい? ま、味は保証するよ」
「じゃあ、これを二つ」
「まいどあり」
商人は弾んだ声で言って、二つのロールケーキを手際よく紙に包んでいく。どうぞ、と手渡され、それを受け取ると想像よりも軽かった。
ローズの喜んでくれる顔が浮かび、リヴァイは知らず知らずのうちに表情を綻ばせていた。
大事に抱え、早足で家に帰る。
このために紅茶も用意した。ティーカップも用意した。
「ローズ」
自然と名前が口からこぼれる。
息が弾む。
早く会いたい。ローズに。