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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第8章 Rose



 その日、ローズは部屋にこもってなにやらガサガサと動いていた。いつも通りの金稼ぎを終えて帰ってきても、ローズはまだ部屋の中にいた。


「ローズ、入るぞ」


 一応ノックをして、リヴァイはローズの部屋のドアを開けた。


「さっきからなに、やっ、て……」

「ごめんね、リヴァイ。騒がしくしちゃって」


 部屋の中を見て、リヴァイはしばらくの間言葉を失った。
 ローズが住み始めてそれなりに生活感のあった部屋が、綺麗さっぱいなくなっていた。こまごまと集めていた洋服は袋の中にしまわれ、机の上に置かれていた本は部屋の隅に積まれていた。カーテンは取り払われ、壁に飾っていたドライフラワーもなくなっている。

 ドアのそばで立ち尽くしたリヴァイを見て、ローズは困ったように笑った。


「あたしが死んだ後、リヴァイに迷惑かけたくなくて。せめて身の回りの整理くらいはしておこうかなって」


 全身が強ばっていた。ローズの気配が確実になくなっていく。その事実はリヴァイの心臓を冷たい手で掴む。
 

「服は売るなり燃やすなり、あとはだれかに譲ってあげて。本もリヴァイが読むなら残しておくけど……どうする?」

「……ぜんぶ、残す」

「リヴァイ」

「ずっとここに、残しておく」


 振り絞った声だった。ローズは悲しそうに眉を下げる。
 リヴァイの体は寂しさと悔しさでカッカと火照っていた。


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