第7章 Odontoglossum
ローズの脳裏にエルヴィンの姿がよぎった。その時ようやくローズは理解した。
なぜリヴァイがあんなにもエルヴィンのことを敵視しているのか。理解して、ローズは今にも泣きそうになった。
「……前も言ったと思うけど、あたしは短命で」
「それはわかってる。でも、俺が言いたいのはそうじゃねぇ」
「うん」
ごめんね。わざと意地悪なこと言った。
ローズはもう片方の手でリヴァイの手を包み込んだ。
「大丈夫だよ、リヴァイ」
ローズは囁く。目を伏せて、穏やかに微笑む。
「あたしはどこにも行かない」
それは自分にも言い聞かせるような声音だった。
心臓がいつもよりずっと早く動いていた。
「あたしは、リヴァイを愛しているから」
この気持ちは家族に向けるものとは決定的に違う。それくらい、ローズにもわかる。リヴァイはローズの言葉にぽかんと口を開けた。
「あ、い……」
「うん。あなたを心から」
改めて言うと恥ずかしいね、と照れを誤魔化すためにローズは早口で言った。
「本当はね、この気持ちをあなたに言うつもりはなかったの」
己の心をそっと吐露する。
あの喧嘩を経て、リヴァイにはちゃんと自分の気持ちを伝えなければいけないと思った。