第6章 Narcissus
「ねぇ、リヴァイ。どういうこと?」
「帰るぞ、ローズ」
エルヴィンがいなくなり、ため息をついたローズが厳しく言う。
しかしリヴァイはそれを無視してローズの手を掴んだ。
「え、ちょっと、まだ仕事が」
「そんなのどうでもいい」
今のリヴァイを突き動かしているのは怒りだった。
図星を突かれて、何もかもがスマートで、リヴァイには到底届かないようなところにいる男を見てしまったから。
自分なんかより、あの男のそばにいた方がローズも幸せなんじゃないかと思ってしまったから。
感情がぐちゃぐちゃで、ろくに喋れそうになかった。
ちょっと、と困ったように言っていたローズだったが、やがて諦めたように大人しくリヴァイについて来ていた。
家のドアを開け、無言でローズをリビングまで連れて行く。
「あの男は、お前を地上に連れて行こうとしている」
ローズをソファに座らせ、その前に立ったリヴァイは彼女の顔も見ずにそう言い切った。
「エルヴィンさんはただのお客さんよ。それに、なんで急にそんなこと」
「ただの客と手紙のやり取りをするのか!?」
リヴァイの大声に、ローズは息をのんだ。
視界の端で、ローズが手を組むのが見える。足が居心地悪そうに動いていた。
「そ、それは、あたしが無理を言ったからで……」
「もし、あいつがローズを地上へ連れて行くと言ったらどうする」
低く、唸るような問いかけにローズは一瞬、言葉を詰まらせた。