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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第6章 Narcissus



 だがそれをそのままこの男に伝えるわけにはいかない。
 おそらく、エルヴィンはローズの秘密を知らないはずだ。


「ローズが何を選ぼうとそれはローズの自由だ。君に、彼女を止める権利がどこにある」


 これ以上、聞いていられなかった。
 エルヴィンは確実に、リヴァイの心の弱い部分を抉ってきたからだ。そんなこと生まれて初めてで、どうするべきかわからなくて。
 気づくとリヴァイはエルヴィンに飛びかかっていた。


「リヴァイ!!」


 胸ぐらを掴み、拳を振るおうとしたとき、悲鳴にも似た声がリヴァイの体を打った。
 投げ飛ばそうとリヴァイの腕を掴んでいたエルヴィンも、彼の頬に握った拳をぶつける寸前だったリヴァイも、同時に動きを止めた。


「エルヴィンさんに、何しようとしてたの」

「ローズ、なんでもない。少し話をしていただけだよ」


 厳しいローズの声。それを宥めるようにエルヴィンは言った。
 リヴァイはエルヴィンから離れ、ふいっと顔を逸らす。ローズが真っ直ぐ近づいてくるのがわかった。


「話をするだけで、どうして殴り合いにまで発展しかけるんですか」

「騒がせて悪かったね」


 言い訳のしようもない、と言いたげにエルヴィンは肩をすくめた。


「……話し合いも終わったし、俺はそろそろ帰るよ。また会おう、リヴァイ」


 ゆらり、とエルヴィンを見た。
 彼は冷えた目でリヴァイを一瞥し、ローズに微笑みを浮かべて歩いて行った。その背筋はまっすぐ伸びていて、悔しさにリヴァイは歯を食いしばった。


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