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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第6章 Narcissus



 一人の男が店から出てくる。
 華やかな金髪を丁寧に撫でつけた男。大柄で、前に無言で立たれれば萎縮してしまうような圧だ。


「おい、お前」


 だがリヴァイはそうではなかった。

 ローズには何も言わず酒場に来たリヴァイは、外でひたすらエルヴィンを待ち続けた。
 話をするために。

 リヴァイは組んでいた腕をほどき、ゆっくりと男の前に立つ。


「……君は?」


 エルヴィンの目が警戒するように細くなった。
 リヴァイの全身を見て、子どもであることに驚いたそぶりを見せる。しかしすぐに拳が握られたのをリヴァイは見逃さなかった。
 リヴァイのことをただの子どもではない、と見抜いたのだろう。


「ローズのことで話がある。知っている名前だろ」


 ローズの名前を出せば、エルヴィンはあからさまに反応した。
 さっと店の方へ目が向く。
 リヴァイは鼻を鳴らした。


「安心しろ。俺は別にローズを傷つけようなんざ思ってねぇ。ただ俺は、お前が気に入らねぇんだ」

「初対面なのにひどい言われようだな」


 エルヴィンは苦笑する。
 この低く、落ち着く声がローズに語りかけていたのかと思うと、不快だった。こいつはローズをリヴァイから奪おうとしているのだ。
 
 一歩、踏み出した。
 ナイフは持ってきていなかった。癪だが、こいつを傷つければローズが深く傷つくとわかっていたからだ。


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