第6章 Narcissus
一人の男が店から出てくる。
華やかな金髪を丁寧に撫でつけた男。大柄で、前に無言で立たれれば萎縮してしまうような圧だ。
「おい、お前」
だがリヴァイはそうではなかった。
ローズには何も言わず酒場に来たリヴァイは、外でひたすらエルヴィンを待ち続けた。
話をするために。
リヴァイは組んでいた腕をほどき、ゆっくりと男の前に立つ。
「……君は?」
エルヴィンの目が警戒するように細くなった。
リヴァイの全身を見て、子どもであることに驚いたそぶりを見せる。しかしすぐに拳が握られたのをリヴァイは見逃さなかった。
リヴァイのことをただの子どもではない、と見抜いたのだろう。
「ローズのことで話がある。知っている名前だろ」
ローズの名前を出せば、エルヴィンはあからさまに反応した。
さっと店の方へ目が向く。
リヴァイは鼻を鳴らした。
「安心しろ。俺は別にローズを傷つけようなんざ思ってねぇ。ただ俺は、お前が気に入らねぇんだ」
「初対面なのにひどい言われようだな」
エルヴィンは苦笑する。
この低く、落ち着く声がローズに語りかけていたのかと思うと、不快だった。こいつはローズをリヴァイから奪おうとしているのだ。
一歩、踏み出した。
ナイフは持ってきていなかった。癪だが、こいつを傷つければローズが深く傷つくとわかっていたからだ。