第6章 Narcissus
「リヴァイ! 返事が来たわ!」
「わぁ!! 地上のお菓子ですって! 美味しそう!」
「うふふ、地上では王様の誕生日を祝うお祭りがあったらしいわ。とっても楽しいんでしょうね」
「一ヶ月後、壁外調査に行くって。……死なないでほしいな」
「リヴァイ! 今度、エルヴィンさんが酒場に来てくれるって! 怪我もなく帰って来れたって、あぁ、よかった……」
手紙のやり取りは長期間続いた。
気づけば季節はめぐり、冬になっていた。
暖炉の前でローズはいつも手紙を読んでいる。
地上のお菓子は美味しかった。お祭りの土産だという高級そうな紅茶も、美味しかった。
一度リヴァイもその手紙を読ませてもらったが、確かにローズの言う通り、エルヴィンの語る話は引き込まれるものがあった。
「ローズ」
今日もまた彼女は手紙を読んでいた。
何度も読み返しているから、手紙の端はヨレていて、少し黒ずんでいる。
丸まった背中に声を投げかける。
「どうしたの?」
名前を呼べば、ローズは必ず返事をしてくれた。ちゃんと手紙から顔をあげて、リヴァイの顔を見てくれる。
彼女の目の中にはリヴァイがいる。
「……今日、エルヴィンが酒場に来るのか?」
そのことに安堵して、それと同時に激しい怒りが噴き出した。
「うん! 壁外の話をしてくれるんですって!」
ローズは楽しそうに笑う。だが、その笑顔が向けられるのはリヴァイにではない。ここにはいない、エルヴィンに向けられるのだ。
唇を噛み締め、リヴァイはただ「そうか」とだけ呟いた。