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999本の薔薇〈進撃の巨人〉

第5章 Big blue lilyturf



 リヴァイは、ローズの真剣な声に不安そうに瞳を揺らした。
 

「あたしはもうすぐ死ぬ」

「……え?」

「明確な日とかはわからないけど、もう一年も生きてはいられない」

「なんで、」


 リヴァイの息が浅くなる。ローズの目にも自然と涙が浮かんだ。
 せめてあと一年、生きられたらいいのに。


「あたしの一族は、短命なの。信じてもらえるかわからないけれど……母さんもそうだった。あたしたちは体の中に花の芽を宿している」


 詳しいことはわからない。だが、そういった一族なのだと母から教えられた。


「その芽は養分としてあたしたちの体から命を吸い取っていく。だから短命で、死ぬと同時に花を咲かせて死んでいく」

「花……?」

「母さんもそうして死んだ。勿忘草を咲かせて死んだわ」


 あの光景をローズは一生忘れないだろう。忘れられるはずがなかった。
 
 リヴァイは目を泳がせ、ローズの言葉の意味を理解しようとしていた。
 いや、もう理解できているのかもしれない。ただ、その意味に気づきたくなかっただけかもしれない。


「じゃあ、ローズも、死ぬ」

「えぇ。死ぬ」

「もうすぐ?」

「たぶんね」

「どう、することも」

「できないわ。それが当たり前のことだから」


 見開いたリヴァイの目から涙がこぼれ落ちた。
 いくつもいくつも、陶器のように滑らかな頬を伝っていく。
 ローズは手を伸ばし、その涙を拭った。


「ごめんね、リヴァイ」

「なんで、謝るんだ」

「秘密にしていたから」

「俺は……」

「リヴァイ、お願いがあるの」


 彼の両頬を包み込む。


「死ぬまで、特別なことは何もしなくていいし、考えなくていい。ただ、いつも通り過ごしていたいわ」


 そして、叶うのなら、穏やかに死にたい。
 
 リヴァイは唇を震わせ、ゆっくりと頷いた。


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