第5章 Big blue lilyturf
リヴァイは、ローズの真剣な声に不安そうに瞳を揺らした。
「あたしはもうすぐ死ぬ」
「……え?」
「明確な日とかはわからないけど、もう一年も生きてはいられない」
「なんで、」
リヴァイの息が浅くなる。ローズの目にも自然と涙が浮かんだ。
せめてあと一年、生きられたらいいのに。
「あたしの一族は、短命なの。信じてもらえるかわからないけれど……母さんもそうだった。あたしたちは体の中に花の芽を宿している」
詳しいことはわからない。だが、そういった一族なのだと母から教えられた。
「その芽は養分としてあたしたちの体から命を吸い取っていく。だから短命で、死ぬと同時に花を咲かせて死んでいく」
「花……?」
「母さんもそうして死んだ。勿忘草を咲かせて死んだわ」
あの光景をローズは一生忘れないだろう。忘れられるはずがなかった。
リヴァイは目を泳がせ、ローズの言葉の意味を理解しようとしていた。
いや、もう理解できているのかもしれない。ただ、その意味に気づきたくなかっただけかもしれない。
「じゃあ、ローズも、死ぬ」
「えぇ。死ぬ」
「もうすぐ?」
「たぶんね」
「どう、することも」
「できないわ。それが当たり前のことだから」
見開いたリヴァイの目から涙がこぼれ落ちた。
いくつもいくつも、陶器のように滑らかな頬を伝っていく。
ローズは手を伸ばし、その涙を拭った。
「ごめんね、リヴァイ」
「なんで、謝るんだ」
「秘密にしていたから」
「俺は……」
「リヴァイ、お願いがあるの」
彼の両頬を包み込む。
「死ぬまで、特別なことは何もしなくていいし、考えなくていい。ただ、いつも通り過ごしていたいわ」
そして、叶うのなら、穏やかに死にたい。
リヴァイは唇を震わせ、ゆっくりと頷いた。